隔離病棟。
鯨 勇魚


ためらいがちな足音に、
黒猫がライ麦畑を横切るかと思えば、
まあるくなり、
ひだまりのにおい。
そのままの、ひだまり猫は、
午睡したまま、動こうとしない。
向日葵の群生。
その下を駆け抜ける、
むぎわらぼうし。
陽射しを避けるように。

遠い夏の風景は、
すでにその風景の中の、
ひとこま。に、なってしまう。

幼い日の記憶。
朝顔の花をむしったなら、
雨が降る。
なんて教えてくれたのは、
眠りのふちで、
巻いたしっぽを、
はたはたさせている。
ひだまり猫が、
懐かしいものは、
あくびのように、
わけのわからない涙。
(疑問からの憶測。)
そうなのかもしれません。

はっきりとしない理由を揺らし、
夕暮れにブランコを揺らして。
たとえばラムネ玉を喉に、
つまらせそうになりながら、
背中の景色の高さから、
きこえた風があの、
あさがおの彩りに似て。

昔も明日も、
天気でありますように。

ねぇ。
いつのまにか真っ暗闇で、
ねぇ。
時間はなぜ24時間なのだろう。

揺れながら時間と成長の中、
月夜のブランコではしゃぐ。

あたしなりの自由を、と。

猫ちゃん。
おひげが、立派ね。
明日は、晴れるかしら。



自由詩 隔離病棟。 Copyright 鯨 勇魚 2008-08-28 20:10:34
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