夏の終わりの夏祭り
かんな

今日は地元の祭りだ
うちは農家だからそんな時だけ店を出す
梨やさつまいもやごぼうなんかを売る
そこらの市場の真似事みたいなもんだ

浜の方のおばちゃんと
親戚のおばちゃんと
村のまんじゅう屋のおっちゃんと
私と父が売り子やら
梨やさつまいもの蒸かしたものなんかを試食用に切る
一夜限りのパーティーだ

顔なじみのたこ焼き屋のおっちゃんや
フレンチドッグのおばちゃんや
クレープ屋のにいちゃんや
そんな中で私は梨屋のねぇちゃんになる
一夜限りのねぇちゃんだ

店がてんやわんやになる前にお参りに行く
五円と五十円玉を持って行く
五円玉はお賽銭、五十円はおみくじだ
ご縁を祈って、おみくじは大吉!
きっといいことあるさと、結びつける

ライトアップされた寺の塔や
あかりの灯されたちょうちんが並ぶ
店の電球に虫がよっては払いのける手
片隅に置かれた蚊取り線香のほんのりとした匂い

ずいぶんと大人の姿が見えなくなった
子供たちが浴衣を着て歩く姿はかわらない
少し陰になったところで集まってはだべる
村の消防団が、おつかれさまですと通りすぎた

九時半を過ぎると祭りも終わりを迎えて
おのおのの店が片づけを始める
店のライトが消され、一時の光が消える

なんだかまぼろしのように
一夜限りのパーティーは解散し
一夜限りの梨屋のねぇちゃんの夏も終わった



自由詩 夏の終わりの夏祭り Copyright かんな 2008-08-28 13:20:57
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