夜中、夜中
捨て彦
ばらばらに散らばっていた いろんな言葉が
ひょんな瞬間体に まとわりついてくるんだけど
でも
知らない女の舌が
僕の肌をすっと すべっただけで
またそれはすぐに ばらばらになって消えてしまう
キンキンに冷えた薄暗い部屋の中。
午前過ぎ、
街の夜なんてのは、
タクシーやら中年のゲロやらにまみれて
地面に這いつくばっているのが お似合いだと思う。
別の夜
眠っているあなたの背中の
ミシン目に沿ってハサミを入れる
けれども、
( 気になっているのは あなたではなくて、
隣の席に座っている 既婚の女の人なのだよ
その日はまた、
レイトショーに間に合わなくて 途方にくれている人が
いたりもする。
道路の脇で
だらだらと流れ落ちる汗が
地面に着くころにはビー玉になって
街の色を映している。
という比喩。
思い浮かべて、
ポケットから取り出したビー玉を
おもむろに車道に投げ捨てる
その表面には間違いなく街の明かりが映りこんで
( その表面には間違いなく街の明かりが映りこんで )
いるような気がした瞬間
ビー玉はタイヤの下敷きに。