夜中、夜中
捨て彦

ばらばらに散らばっていた いろんな言葉が
ひょんな瞬間体に まとわりついてくるんだけど
でも
知らない女の舌が
僕の肌をすっと すべっただけで
またそれはすぐに ばらばらになって消えてしまう

キンキンに冷えた薄暗い部屋の中。

午前過ぎ、
街の夜なんてのは、
タクシーやら中年のゲロやらにまみれて 
地面に這いつくばっているのが お似合いだと思う。

別の夜

眠っているあなたの背中の
ミシン目に沿ってハサミを入れる
けれども、
( 気になっているのは あなたではなくて、
隣の席に座っている 既婚の女の人なのだよ

その日はまた、
レイトショーに間に合わなくて 途方にくれている人が
いたりもする。

道路の脇で

だらだらと流れ落ちる汗が
地面に着くころにはビー玉になって
街の色を映している。

という比喩。

思い浮かべて、
ポケットから取り出したビー玉を
おもむろに車道に投げ捨てる


その表面には間違いなく街の明かりが映りこんで
( その表面には間違いなく街の明かりが映りこんで )


いるような気がした瞬間
ビー玉はタイヤの下敷きに。




自由詩 夜中、夜中 Copyright 捨て彦 2004-07-25 01:05:49
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