ミーのこと
タマムシ

やせっぽっちの捨て猫だった

ミーミーないていたのでミーと名づけた
小雨が降る桜が散ったあとの公園だった

とても弱っていてミルクも飲まない
指先にミルクをひたして唇に寄せた
かたく閉じていた口がすこし開いて

ピンク色のベロが見えた
やっぱりミーだと思った

心配だったのでお医者さんに診せた
「二三日しか生きられないでしょう」と言われた
そんなところまでミーだった

強く抱きしめてあげることができないので
知らないうちに眠ってしまうまで見つめ続けた
はっとして目が覚めてまだ生きていることに安心した

写真を撮った
何枚も何枚もいろんな角度から撮った
忘れたくない記憶にしたくて必死だった
よろよろと歩こうとするけど転んでしまうミーだった

二三日が経ってしまった
ミーが動かなくなってしまった
動かなくてもそれはたしかにミーだった

わたしの手のひらに
すっぽりとおさまってしまうくらいの
小さな小さな

いのちだった
   


自由詩 ミーのこと Copyright タマムシ 2008-08-27 00:13:43
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