蝉と木
tomtom_poem

さるもすべる空のもと
街路にさるすべりの木
つよい色香を
はげしい陽光で
まっかにむれた
花群
あこがれの女優が
かいまみせた
きゃしゃなうで
さわってはこわれるような
すこしめくれて
にくがみえそうな
みきに
母恋い蝉が
とどまっている
おきているのかいないのか
しょうきでいるのかいないのか
なくまでもなく
むずがるまでもなく
すべりおちないで
たたずんでいて
人々いぜんに
人造機械に
ほりおこされ
ふみかためられ
つちからすいあげた
母の樹液をすいに
ぼんような蝉は
めをあけた
 こえをかけた
なにごとかはっしたようにきこえた
 もういちどはなしかけた
もうめをとじている
 はねをさすろうとした
まんぞくしているようだった

蝉と木はじゅうぶんに
愛をたしかめあっていた


自由詩 蝉と木 Copyright tomtom_poem 2008-08-26 22:06:42
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