榊 慧





慣れない行為だ、と思う。
潰そうと思えば潰せるんじゃないかと考え、じゃあ俺は今この男の命を操れるんだという結論に至る。そこで興奮はしないけれども。あくまで冷めている。俺はそういうサディストではないから。この男が興奮しているのは『よくわかんなくなってる少女に教えていく』というシチュエーションであり、求めているのは『(男に対して、)弱い女の子』だ。実際教えるというよりただ汚い欲望(ロマンなんてそんなものだ)を半裸体にぶつけているだけなのだが。そして最初に戻る。男の“モノ”を俺は顔の前で両手をそえている。慣れない行為だ。組み敷いた気分にでもなってるんだろうな、と軽く想像する。別に俺が淫らなわけじゃない。どちらかといえばストイックだ。(と主張する。)こうでもしなければ長引くからであって、俺はこの悲観すべき状況から逃れるのを4回目ほどであきらめた。大の大人には決してかなわない。そういうものだ。そうじゃなければ世の中は成り立ってないだろうから、と納得させた。男の息をする音が聞こえる。興奮しているのだ。興奮していることは今俺が握っているものでわかっているけれど。大きいか小さいかは分からない。ただ独特のにおいと熱さを感じる。男が怪しんでいる様なので俺は手を動かした。ドクドクといっているような気がする。男は俺の胸元で探るように手を動かしている。正直あまりうれしくはない。仕方なく口に含むと独特のにおいと味のようなものが広がる。とっとと終わらせたい。その一心だった。気持ちいいのか呼吸が荒くなっていく。聞こえる男の声は、まさしく変態らしい声。ガッと男が俺の首を持ったかと思うと口の中に吐き出した。吐き出しながら男はわざとすこし俺の口からそれるようにし、顔にもかけた。飲んで欲しいらしい。後で吐こう。俺は出来る限り帰る準備をし、男の話を聞かずに部屋を出ようとした。ガチャガチャとドアノブを動かしてから気がついた。男は、最初から鍵を閉めていたのだ。いつも「いいの?鍵開いてるから人が来ちゃうよ?」などと言っていたからこのことを失念していた。なんたる失態。しかしそこでくじける俺じゃない。男にこの幼さ特有の顔と体を見せるように振り向いてこちらから近寄り、上目遣いで男の目を見る。「あけて。」我ながら反吐が出るが仕方がない。男の前では最近すっかりこのキャラで通っているのだ。そしてまだ可愛げの残ってた時でもあった。幼いというのは最高のスパイスということである。男は散々俺のからだを擦ったあと、やっとドアを開けてくれた。大分前の話である。今では立派な不細工になってしまった。

                                
                                       了


散文(批評随筆小説等)Copyright 榊 慧 2008-08-26 22:06:16
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