ワイシャツ
松本 卓也

右肩から首筋に響く痛みは
今日も自由を食い潰して
幾許かの金を得るためにだけ
言い訳をした証しに他ならず

晩夏の空が奏でる歌は
甲高い声で泣く女がするフリのよう
欠片さえ心象を捉えることはない

互いに同情を擦りながら
現在を甘んじるしかない三十代
平凡に生まれ過ごした青春の残骸に
口の端を歪める程度の抵抗しか出来ず

涼風を浴びながらなお
風に吹かれる己が身を
呪わずにはいれない

さて、酒を喉に注ぎ
肺を煙で汚すだけの夜を過ごそうか
甘んじた末かどうか知らんけど
少しは疲れが紛れるのならば

首元が緩みきったシャツや
垢に汚れたハンカチなどは
洗濯機に流してしまおう

流した汗が染み込んで
抱えた荷物に磨り減った
ワイシャツが少しでも
軽くなればいいんだけれど



自由詩 ワイシャツ Copyright 松本 卓也 2008-08-24 22:19:34
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