ザ・ブーンンンン
砂木


何か おみやげを買っていくか?

駅の通り 大型スーパー五階
食事をすませても 汽車の時刻まで間がある

うん

家族連れ 二人連れ 休日の店内は
活気に満ちていた

何を買うの?

お菓子でいいだろう
うちの親は まんじゅうかな
一緒のでいいだろう

うちの親は わかめの方かな

そうかあ ああ これいいな どうだ
ピンクの小さな珊瑚を真似たネックレス
俺が買うから どうだ

うーん金属アレルギーだからね
つけられないけど かわいいね

レジに まんじゅう一箱 わかめ ネックレスを
持っていきながら
自分の写真入りのペンダントが下がる首もとに
赤い痕があるのをみつける

かゆくなってかぶれてくるの
もう はずそう

指輪もか
レジでおつりを受け取り下へ下がるエスカレーターに
並んで乗る

たまに つけるのはいいんだけど
遊びならね

遊びか

エスカレーターを急に走って降りて
どうしたの?という彼女に向かって
彼は両手をひろげた

えっ 何 恥ずかしい ちょっとやめてよ

隣りのエスカレーターで
のぼって行く子供達が笑って見ている

下の売り場のおばさんおじさん達が
見ないように見ている

両手をひろげた彼に 降り立ち怒ってみせる
馬鹿じゃないの

結婚しよう
次のエスカレーターに並んで乗り
彼女の耳元に彼はささやいた

急にこんな所で 何を言ってるの

彼はエスカレーターを走って降りた
五階から出口のある一階の下りの最後で
両手をひろげて待っている

通りすがりの人が 物知り顔で通り過ぎる
にやにやと 笑う人もいる

ひどい ナンパじゃあるまいし
一生に一度のプロポーズを こんなこんな
試されている まだ浮気を疑っている

両手をひろげた彼にたどりついた彼女は
彼を見ずに店を出た
汽車の時刻がせまっている

駅へ 二人は行くしかなかった
離れて座った彼女の隣りへ彼が座る
おみやげの入ったビニール袋が
がさがさいう

今度 家に行くよ お父さんお母さんのいる時に

私 返事していない

じぁあ 今度会ったら

うん

ガタンゴトンガタンゴトン 快速が揺れる
じっと前を見て座っている彼を 窓の中に見る

あのね 汽車を間違えた時にね

うん

隣りに座っていた人が親切に車掌さんに言ってくれて
海が近いから 待っている間に行ってみたらって

うん

それだけだよ

そうか

いつ来るの?










自由詩 ザ・ブーンンンン Copyright 砂木 2008-08-24 22:10:21
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