around
あすくれかおす




夏はかき消えたわけではなくて

ものごとを何とか見よう見ようとする思いが
季節に関しても働いていて



私のタマシイも視力検査の黒い目隠しを握って
残暑側に空いてるCマークを肌寒さだとか答えがちで

虫の鳴き声も
みんみんからリンリンに乗りかえがちである



私が弾け飛ばないかぎり
世界は弾け飛ばないし

きっとそろばんの玉だって いつまでも枠に収まったままだし

深夜に目が覚めたからと言って
悩みよりも尿意だったりして

なんだかとても哀しくなって
私は散歩をしたりしている




(ぼくのおぼれる行き先はどこ?)

 

 

この日の夜空はあの日の海と同じように深く黙っていて
 


ひょっとしたら空も 
よせてはかえしているのではないか



そんなふうにも思えてきて

それなら海さんの代わりに空さんに「バカヤロー」って叫んでみたっていいけど

近所迷惑になる程度で済み 
であるからして結局のところ
私の気は済まないのである



(ぼくのみつめる君はゆめ?)
 


私はそうやってぶらぶら揺れながらこの世を漂っている

私が弾け飛ばない限り
この世も弾け飛ばないことを分かっているから


私のアラウンドザワールドぜんぶを
恋に関する感傷とかにすり替えることで

私は事物を見よう見ようとする無意識から遠ざかりたく思っている
 
 

何も見たくない、と私は言っている

 

夏はかき消えたわけではなくて

ものごとを見まい見まいとする
私の意思の力が時節に関しても働いているだけである
 



そして ゴルフボールほどもある
記録的な雨粒がいま
私のおでこをぺしゃりと叩いた

 

私は反射的に「ごめん」とつぶやいた
 
 

私のアラウンドザワールドぜんぶがその時

ごめんという言葉でぺしゃんこになった

 


(どうやら行ってしまったようだ

ぼくのつぼみは ぼくの汽笛になって

弾け飛ぶはずのない踏切を渡って)















自由詩 around Copyright あすくれかおす 2008-08-24 20:53:59
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