虹の名
木立 悟
雪はつもり
せわしなく落ち
寄生木と寄生木と寄生木の森
冬が虹を捨てに来る森
枝と鉱 黒と緑
はざまにはざまにそそがれるもの
響くうちは
水でいられる
暗く小さな花のつらなり
ゆるやかに傾く波の輪となり
暗がりに眠りひしめき
互いの息にそよぎめざめる
風は退き
ふちどりを残し
声は満ちて 声は満ちて
光のあたらぬ水は華やぐ
花は枝のはざまをすぎて
夜へ夜へ夜へ昇る
枝に下がる壊れた文字から
虹の名前がこぼれている
雨が雨になるときの
小さな震えが川をわたる
欠けたままにひらく唱
わずかに狭まる夜を馳せる