宝船
ばんざわ くにお
これは知人から聞いた話
宝船を作ることが趣味の男がいた
船の材料は安い紙だが
金銀の色紙で作った財宝をのせている
そんな宝船が
男はこよなく好きだった
ある日曜日
いつものように宝船を作っていると
知らない若い女が男の家を訪ねてきた
宝船を作って欲しいと言う
理由を尋ねると
近々お店をはじめるので
店にかざりたいと言う
男は喜んでひきうけた
一ヶ月後に引き取りにくると言って
若い女は帰った
その夜 宝船を作りながら
男は寝てしまった
夢を見た
夢のなかで男は
宝船のような船で
濃い霧の中を進んでいた
大黒さんによく似た太った船員に
行き先を尋ねると
蓬莱島に向っているという
そんな島がこの世にあったのかと
思っていたら
蓬莱島に着いた
蓬莱島には蓬莱山があって
訪ねていくと
あでやかな色香の弁天様が迎えてくれた
まるでこの世の極楽のような
美しい色彩と快楽を感じるものだった
しかし どこかで見覚えのある顔だと思ったが
思い出せない
誰だろうと思ったら
目がさめた
朝になっていた
宝船は完成したが
一ヶ月たっても
二ヶ月たっても
依頼主は引き取りに現れなかった
男は今では
本当に女が家にやってきたのかどうか
わからなくなっていた
あれは夢だったのだろうか
何故あのとき連絡先を聞かなかったのか
不思議に思うが
あの時は別に気にならなかった
引き取り先のない宝船は
男の家の窓辺に置かれた
そこはよく日が当たる場所で
毎朝 朝日を浴びて
宝船は美しく輝いている
まるで蓬莱山で会った
弁天様のように