占い師
星月冬灯


 私は人を惑わす

 この呪われた口よ


 虚言と罵られようとも

 真実を云っているだけなのに


 人の生命(いのち)さえも奪う

 罪深きこの言の葉は

 どうしたらよいのか


 答えも見い出せないまま

 ただ年を送り


 そうしてまた

 人を欺く

 この先には一体何が

 待ち受けていることか


 恐ろしくて考えたくもない


 人には厳しく律せよと求め

 己にはどこまでも甘い

 こんなに醜い心の持ち主であるのに

 なぜこのような能力が

 備わっているのか


 私に一体何をせよというのか

 私に一体この世でどうしろというのか


 迷いは心の蟠(わだかま)りとなり

 渦巻いているというのに


 ああ

 今日も私は

 この選ばれた口から

 己(おの)が真実と思えたることを

 発してゆく


 言の葉の威力は

 底知れぬもので

 私を信じ

 私を崇拝した者たちが

 列となり

 この寒空の下でも

 並んで待っている


 ああ

 狂おしい口よ

 呪われし言の葉よ


 人の運命は変えられても

 己の運命は変えられず


 人の人生の先が解っても

 己の人生の先は見えず


 施すだけ施して

 私は何も施されない


 宿命(さだめ)とは

 時には酷で

 淋しいものよ


自由詩 占い師 Copyright 星月冬灯 2008-08-23 08:53:10
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