日曜日
縞田みやぎ
きちんとした襟の
背の低い男が
背を丸くして立っている
教会の門の前
指先の
薄茶けたしみと
視界のかしいだ
米が落ちている
祝福の
後先に
三本目のつえが
石畳のみぞを
せわしなくなぞり
男は
年寄りたちを
待っている
戦争の話を聞くために
陽はぼんやりと高く
もうじき
あの飛行機の爆音が
耳元を過ぎるのだ
この時代にも
帽子をはすにした
女は
家で猫を飼っている
すれちがいざまに
し しい と
浅く息を吐いた
この時代にも
祝福を
と
男がつぶやく
あの飛行機の爆音が
年寄りたちが
目を閉じている間に
男は
もうなんべんも
全ての川岸に
やわらかなおしまいがふることを
なぞり続けた
陽はぼんやりと高く
花嫁は絹のすそを
たくしあげて礼をする
女の家で
うろんにふりかえる
猫
年寄り
の
かきあわせた襟元
礼拝堂には
朝から線香のにおいがしていた
さいわいなるかな
さいわいなるかな
もうなんべんも
おしまいがふった日曜日に
すべてはうつむいて
あさく
目をとじていた