夜球
あおば

              080820




夜というのは
夜があるのは
地球人には当たり前
でも
太陽人には不思議なことで
夜なんて
何処にも売ってない
もしかしたら
大昔
お金次第で
なんでもこなす
非合法のマーケット
闇の組織が請け合って
こっそりと作りあげたのではないかと
額の頭に汗をかき
あついあついといいながら
古文書を探してる

太陽の古文書は見つからないが
太陽人に憧れた地球人は考える
夜は経済活動が弱まる
資金を有効に使うには
夜を無くせと考えた

投機筋も動いたのか
太陽を三つ揃え
夜を無くす法案が
議会に出され
与野党の賛成を得て
圧倒的多数で可決され
準備期間を経た10年後には
実地されることになる

太陽をあと2つ揃えるのは
法外なお金が掛かる
合法的には実現不可能なので
ミラーボールを参考に
空洞の反射球、名付けて夜球を2つ作りあげ
ロケットで
月と地球の中間の
静止軌道に運び上げ
いよいよ明日から試験運用となる
表面は売れ残った白ペンキを塗ったので
大きさの割には安く
実現可能となったのだ

夜を無くした偉人と
発案者は褒められて
好い気持ち
夜が無くなったので
深夜料金が取れなくなった
タクシー会社は口惜しそう
昼夜逆転している人たちは
これからは誰憚ることなく
明るい時間に眠ることが出来ると
喜んでいる
屋根のないところに住んでいる人たちには
アイマスクが配られた
月光浴が出来なくなったので
損害賠償を求めて訴訟を起こす団体も生まれ
なんだか騒がしくなりそうな雲行きですが
子供たちはすぐ馴れて
昔は夜があったのだという老人を
化石のような目付きで眺めるのが
目に見えるようです




初出 「poenique」の「即興ゴルコンダ」、タイトルはイシダユーリさん






自由詩 夜球 Copyright あおば 2008-08-20 22:06:43
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