函 館
るか

函 館


黎明の
挨拶が
きみの喉から
洩れる、
と、
わたしのことばは
意味をうしなって
ぬれそぼった
草を
いたわることも
できない


窓からのぞめる
ふかい色に
たえている海は
今朝も
あんなにも寂しそう



波のなかで
だれと
だれを殺しているのか
問えば
うみどりたちは
一斉に
口をつぐむから───


( ある日


港のほうへ
港のほうへ
みしらぬ他人の弔いへ
参列する、
そのために
ながい
坂道を。


降る、雪を
まちきれない
絞首台のような
電灯が
潮風にきしんでいる
夕暮れで
あった )


あかい
鴎は、つたえた。


はぐれた
子どもが
ちいさな指で
水たまりで
遊んでいます、───


さようなら、
また
いつか。


くれてゆく
海の熱さ
水たまりにうつった
子どもの



さようなら、
だが



「 なにひとつ 了っていないにせよ
すべて了っているにせよ 」 


辺りは
いつまでも


明るかった



自由詩 函 館 Copyright るか 2008-08-19 12:16:13
notebook Home 戻る