函 館
るか
函 館
黎明の
挨拶が
きみの喉から
洩れる、
と、
わたしのことばは
意味をうしなって
ぬれそぼった
草を
いたわることも
できない
窓からのぞめる
ふかい色に
たえている海は
今朝も
あんなにも寂しそう
で
波のなかで
だれと
だれを殺しているのか
問えば
うみどりたちは
一斉に
口をつぐむから───
( ある日
港のほうへ
港のほうへ
みしらぬ他人の弔いへ
参列する、
そのために
ながい
坂道を。
降る、雪を
まちきれない
絞首台のような
電灯が
潮風にきしんでいる
夕暮れで
あった )
あかい
鴎は、つたえた。
はぐれた
子どもが
ちいさな指で
水たまりで
遊んでいます、───
さようなら、
また
いつか。
くれてゆく
海の熱さ
水たまりにうつった
子どもの
顔
さようなら、
だが
「 なにひとつ 了っていないにせよ
すべて了っているにせよ 」
辺りは
いつまでも
明るかった