わたしの手鏡
猫のひたい撫でるたま子

わたしは私の景色は持っていたけど、わたしの手鏡は持っていなかった

きみは年より大人だ

あなたはまだ子供だ

おまえは不思議な顔をしている

きみは美しい

あなたは心がある

あんたは人に優しくできない

色んなひとの鏡を借りてわたしを写してきた

醜く写すよりも、なるべく綺麗に写るものを探してきた

ひとが表現するわたしが沢山集まって、映写された光が一人になるようにそれがわたしなんだと思ってきた

映写された虚像のわたしは、触ろうとしても手をかすめるばかり

幼いわたし、手鏡にわたしを写してみても醜いばかりだった

それよりも綺麗な景色を見る方が良かった

いつの日からか手鏡を心のどこかに隠して鍵をかけた

わたしはだあれ?

誰か教えて


わたしは自分が見えなくなったから、ひとから表現されないとわたしがいなくなった様に感じるようになった

あなたはこうだと決めてくれると、その人に従っていくようになった

鍵をかけた小さな部屋には手鏡が空を写している


自由詩 わたしの手鏡 Copyright 猫のひたい撫でるたま子 2008-08-17 23:48:57
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