夏色日記より
銀猫
あの日の高い空と
りんどうの青むらさきを覚えている
明日からのひとりを
蜜のような孤独だと
わたしは微笑んでいたと思う
傍らの古いラジオが
虫の声のように囁き
夏色を少しずつ消して
日焼けの肩を白く戻しては
わたしをまた裸にする
その緩い時の流れは
擦り傷だらけの手足を、
頑なな瞼を、
やわらかく撫で
弱々しく泣かせてくれるはずだ
鎖骨にできた、
ちいさな水溜まりが乾く頃
わたしは髪を切って
何処かの川辺りから
赤茶けた記憶と一緒に流そう
風が止んだ
庭草の匂いが
熱の名残を語る
早く、
早く九月になれば