月はどこだ
依
夜の端から
空を見上げる
「月はどこだ」
そこにあるはずの光
耳を劈くほどの静寂
震えない鼓膜
僕という、不確かで嘘つきな存在は
また誰かの言葉を借りて
ひそやかな暗みに手を伸べてみるのだ
言い知れない夜の寂しさ
眠りながら泳ぎ続ける回遊魚みたいに
命をどこかへ置きっぱにして
知っている
僕はきっと、とうに何かに気づいている
「月はどこだ」
煌々と輝く天体
それがたとえ借りものの光だったとしても
もう、眩しくて見ることができない
自由詩
月はどこだ
Copyright
依
2008-08-17 01:33:12