夏夜
こゆり

むせ返る
暑風に運ばれる
火薬の 
あの夏のにおいが
けむたくて
目を伏せてしまいそうなほど

短い季節の 
そのページがまぶしくて
栞もはさまず
本をとじた


夏の
暗空に舞い上がり
はじけ散った光の粒
頭上では
けむりだけが
跡を残し

夜の
提燈のあかり
並ぶ屋台から
運ばれてくる
こおばしいにおい
浴衣姿

君の声

麻酔のように
感覚を失い
ふたたび
深い眠りに沈む

この季節に


自由詩 夏夜 Copyright こゆり 2008-08-16 13:01:18
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