無常
佐々木妖精
好きだった
あれこれ眺めること
時間だけを支払うこと
手ぶらでドアをこじ開けること
手放せずにいた
かもしれないを
恐れていた
買わないが消えてしまうのを
自動ドアに認知されない子が
入口でうなだれている
張り付いたシャツ
乱反射するジャリ銭
故障中のガチャガチャ
裏口はどこも手動だ
好きだった書店から
ハナ差抜け出すも
今日はまだ
歩く速度で先を行く
あらゆる明日が秩序だって並び
飛び石と断崖をちらつかせている
目を閉じてコインを弾く
砂利道
嫌いじゃなかった
転ぶかもしれない不安が
この道を砕き
砂漠にしたのは誰だ
土ふまずが疼き
流砂に飲まれ
流行り歌口ずさんで砂を噛む
もういっそ
埋もれきって
セミの幼虫に
聞かせてやろうじゃないか
今日に追いつく頃
親子揃って歌ってもらった
揺らぐことなき子守唄を
もぐらを枕にして