りんご
小川 葉

 
友だちの
りんご畑から
りんごを盗んでしまった

十数年後
街でばったり
友だちに会った

一緒にお酒を飲んだ
ふところには
あの日のりんごが
ひとつあった

りんごは食べなかった
これからも
食べることはないだろう

どうして
盗んだりしたんだろう
喉がかわいた
わけでもなかったのに

またお酒を飲もうと
約束して別れた
けれども
約束が守られることは
もうなかった

りんごだけが残った
盗んでしまった
真っ赤なりんごが
ひとつだけ
残ってしまった
 


自由詩 りんご Copyright 小川 葉 2008-08-15 17:10:02
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