朝のイマージュ
佐野権太

それは
細く透明な糸に操られた
いっぺんの羽である
淡いひかりに温められた石のうえに
ふわり、着地しそうにみえて
寸前で自由に浮上する

どこかへ帰着しようなどという
よこしまな結び目はない
呼吸のリズムに
するすると導かれる
その先端には
常に開放された空がある

ときに
憂いをもった白い繊毛が
内側をなめらかに摩擦する
風波にかよわく吹き流されて
尾をひくしなやかな声紋を聴く

しかし
それをとらえようとすれば
いつのまにか
すっくと健康な関節を屈伸させて
また水色の空を泳いでいる

ただただ
あこがれのように
仰ぎみるばかりである







自由詩 朝のイマージュ Copyright 佐野権太 2008-08-15 13:52:28
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