ザ・ブーンンン
砂木
髪からはずした指で頬杖をつく
汽車の窓をみつめて
腕組みしながら眠るあなたに
微笑んでみる
間違いといわれて問わずにいられない
どんな女が好みでしたっけ
もうすぐだよ おきて
少し顔を曇らせて
私は 黙りこんでみせる
ここか
うん
二人が降り立ったのは 浜の名前のつく駅
窓から 海の景色が見える
汽車を間違えたと車掌さんに言ったら
この駅で 引き返す汽車を待ちなさいって
降ろしてくれたのね それで
それで 男と会ったのか
ゆっくりと私は背中を向けて歩く
おい
海よ 行こう
駅をでると 潮の匂いが かまいだす
およいでもおよいでも おぼれていく
砂場は熱くなっていた
靴に 靴下に砂が入る
こんなに熱くて サンダルを忘れてくるはずがない
どこで脱いだんだ
波と少し遊んで 忘れたのよ
時計をみて 慌てて走って
裸足で帰ったわけじゃないだろう
裸足よ
だって汽車の時間て すぐだったから
帰って来た駅の売店でビーチサンダルを買って
家に戻ったの
彼が行こうって言ったといったじゃないか
彼ねえ
汽車がくるまで 一時間もないのよ
ただ 歩いただけよ
なんで一緒にいるんだ
っていうか 誰なんだ
これよ はい
ペンダントをはずして 写真をみせる
なんだよ あっ 俺?
あなたでしょう 海に連れて行くといって
何年も 連れて来てくれないのは
ちょっと ふらっときてみただけよ
やっと一緒に来たわ もう少し歩こうよ
腕を絡ませて 手を絡ませる
まだ顔を曇らせながらも
甘えてくる彼女に 気も緩む
浮気はしていないんだな
わからない するかもよ
あんまり ほおっておくとね
ラーメン 食って帰ろう
いやよ もう少し歩こう
カレーガタベタイッテイッテイタナ
ナンニモナイヨ タダ
ノリマチガエタ汽車ノ トナリニスワッタダケ
マチガエタッテイッタラ 車掌サンニイッテクレタ
カッコヨカッタナア
何を笑っているんだ
間違えるのもたまにはいいなあって
馬鹿じゃないのか
何よ少し 間違えただけよ
アナタガ ツレテキテクレレバヨカッタノヨ