モラトリアム属性
こばんねこ



君に似た音に掠めたあの日
遊、と書いた音さえも
この右側の心臓の中でほのかに響いた気がして
振り返れば
脱線した走者の流れに埋もれた小さな旗が見えました

言葉は
帰るのです

白い爪のひとつひとつに
その赤は去っていきました
途切れた行列は糸電話のようにされど飛行機雲のように
汚れた純白に進んでいきました

そして君も
帰るのですか

忘れ去られた大きな旗が見える地点
缶コーヒーの空き缶の立つ鏡に囲まれた地点にて
声は
音は
君は
馬酔木は
秋桜は
糸電話は、

ゆすらい
ゆすらって
ゆすらいでゆくのです

旗もまた
ゆすらいで、ゆくのです



自由詩 モラトリアム属性 Copyright こばんねこ 2008-08-14 22:24:17
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