包む雨と暮れる人と
霜天

緑の海がたなびいて
少しのカーブで横切るレールを
3両編成の電車がすり抜けていく
乗り合わせた肩は語らないまま
ひとつひとつ 暮れていく

天気予報は雨
降水確率は不明
飾らない傘の行列を
高いビルから見ている
ゴンドラ
吊るされたロープの中
窓を拭く手で夢を見ている


包む雨に
振り続ける手
滑り込むように離れる電車に
明日の景色を
望めないまま
望まないまま


音も包まれ見えなくなった
緑の海で傾く電車の
進行方向は霞の中へ
出発進行
警笛を ひとつ
滑り出す座席に
語らずに 暮れながら
ただ深呼吸で明日を待つ人

車窓に何を見るだろう
包む雨に
振り返す手
ぼやけたレールの
明日の景色に
臨めないまま
臨まないまま


自由詩 包む雨と暮れる人と Copyright 霜天 2004-07-23 01:19:19
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