暮らすように歌う
小川 葉

 
せまい部屋の
小さな飯台をかこむ
家族がいる
いつもの朝だった

祖父はよく
僕のおかずを間違えて
食べた

だれも
気づかない
静かに人が食べる
音だけの
朝がつづいた

祖父は
長生きしたほうだと思う
実際
長生きした

みんな
本当は歌いたかった
暮らすように

葬儀を終えると
堰を切ったようにみんな
よく話した
歌う者さえいた

みんな歌いたかった
みんな自由に
歌うことが
できるようになって
時代が終わった

あれから
暮らすように歌うしかない
いつもの朝が
今日までつづいてる
 


自由詩 暮らすように歌う Copyright 小川 葉 2008-08-13 19:44:13
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