捻くるひと
恋月 ぴの
人間すなおじゃないとね
と
あのひとは言った
あなただって…
と
言い返そうとして
こ
としはまだ蝉の鳴き声を聞いていないことに気付いた
あのガード下へ行けば
聞く
ことできるのかな
薄暗くて罅割れた壁面から地下水
滴り
落ちてぽとり
ぼとり
と
そんな湿った気配のなかで
蝉
ナイテイル
蝉ってさ未通女の危うい恋心
が
好きなのさ
ガード下を抜けたところで
は
ひとりのおじさんが缶を潰していた
あちこちから拾い集めてきた空き缶を
が
しがし叩いていた
人生って
一
度は誰でもぺちゃんこになるんだよ
だとしたら
ひんやりとした棺のなかで悲嘆と献花に埋もれて
み
たい気がして
夏の陽射しは眩しすぎると
蝉
ナイテイタ