ボン・シャンス
草野大悟

手術の日から
三回目の
誕生日を
祝おう。

ぼくの
誕生日プレゼントのひとつは
きみの
じゆうが
羽ばたける
新築の家

おめでとう
みち

一時間の
外出許可を取り、

きみとふたりで
介護車に乗って
家まで行こう。


ホームエレベーターは
ちょっと
窮屈だったけど、
どうしても
二階を、
きみが
窓から見ることになるだろう
桜の緑を、
見て欲しかったから。

そして
なによりも
きみに
カーテンを
選んで欲しかったから。
ずっと
きみを
見守ることになる
カーテンを。


カタログをめくると
これ、
と、速攻で
きみが決めたのは
竹のカーテン

暑くて
暑くて
あんなに好きだった夏に、
車椅子にのって、
左手を思いっきり
ねじ曲げられて、
口から涎を
いっぱい流して、
左足も延びたまま
曲がらなくても
決めた
竹のカーテン



病院のスタッフに
何歳?
と、聞かれて
自信たっぷりに
二十歳
と、答えて
変な顔されても
みち

きみの
二十歳

ぼくの
二十歳なのだ。


ぼくには
どんなときでも
うまれたままの
きみがみえる。


ボン・シャンス

みち

もうひとつ
プレゼントが
あるんだ。

あの日
左手から消えた、
どんなときだってきみが
外さなかった指輪にかえて。





二つ目の結婚指輪








自由詩 ボン・シャンス Copyright 草野大悟 2008-08-11 23:22:25
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