物語に 僕は中で
パラソル

あの弁当の中からたくさんの手が食料を求めていた。
僕は肥後刀をとりだして、これを切りおとして、弁当にして食べた。
とてもゆかいになってマンガの主人公みたいに
足を何本にもふやして走り出した!
パタパタパタ 弁当を持ちながら。

しかし、すぐ行くとレンガのへいにぶちあたった。
そこは、「ピーターと狼」という、絵本の世界だった。
ピーターはすでに狼に食べられていて、
やさしくデフォルメされた狼が、僕を舌なめずりしながら見ている。
口の中には本物の牙があった。

頭上から、やさしい母の声がきこえてきた。

「ほうら、この子は、弁当からはい出した、救いを求める手を、
 切り落として、弁当にしてしまったから、
 おなかをすかせた狼さんに、食べられてしまうのよ」

母の声はやさしく、青白くエコーしていた。


自由詩 物語に 僕は中で Copyright パラソル 2008-08-11 23:06:14
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