寒空のなか
長谷川智子
私は
あまりの寒さに
洞穴で身をかがめていた
外の雪山の吹雪は鳴りやまず
待てど暮らせど帰れやしない
あてもなく途方に暮れかけていた頃
ようやく救助隊が駆けつけた
嬉しさよりも
すぐに見つけてくれなかった恨めしさが先に立ち
手を差しのべた隊員から目を逸らしてしまった
彼は何とも思わなかったように見えたが
ちらっと悲しそうな目をした
彼の背中におぶさって山を下っている間に
小声でつぶやいた
‘さっきは、ごめんなさい’
散文(批評随筆小説等)
寒空のなか
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長谷川智子
2008-08-11 20:31:44