告白
nonya


あのさ
君にはずっと黙っていたんだけど
実はね
僕は土星人と暮らしているんだ
あっ
いつものつまらないジョークなんかじゃないよ
それと
僕はたぶん正気だから心配しないで
えっ
ヒマだから話につきあってくれるって
それなら
本気で告白しちゃおうかなあ

ってことで

彼は地球でいうところの男
なんだと思う
彼は地球でいうところの子供
なんだと思う

彼は茶の間の敷居の上に
パイオニアとボイジャー1号&2号を
等間隔にきっちりと並べないと気が済まない

彼は冷蔵庫のフリーザーを
ひっきりなしに開け放っては
−180度を懸命に探し当てようとしている

彼は新聞の折込チラシを
極めて細長く切り裂いては
カッシーニの間隙を作り出すことに余念がない

彼は電線に引っかかった月を見て
小刻みに飛び跳ねながら
タイタンでの小旅行の想い出に浸っている

彼がたまに耳をふさいでしゃがみこんでしまうのは
地球の空気があまりも濃厚で重すぎるから
水素とヘリウムの希薄な海を泳いでいたからね

彼がときどき自分の拳で自分の頭を叩くのは
壊れた言語変換装置を直そうとしているから
僕はまだ彼から名前で呼ばれたことがない

てなわけだけど

君はまだ笑っているんだね
まあそれでいいんだと思うよ
有り得ない事を受け止めようとしたら
もう笑うしかないものね

えっ
何の音だって?
実は彼がもうすぐここにやって来るんだ
今日はずいぶん興奮しているみたいで
ハ行のパラメーターが上がっている

えっ
どうすればいいかって?
君は「普段どおり」地球語で話せばいい
無理して友達になろうとしなくていいから
君は「普段どおり」地球人でいればいい

うん
彼の大好物は「普段どおり」なんだ
僕達が気楽にハンバーガーを頬張っていれば
彼は僕達の傍らで極めておとなしく
「普段どおり」を咀嚼しているはずだから


自由詩 告白 Copyright nonya 2008-08-11 18:55:00
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