運び屋になったら 
パラソル

僕のトラックにはいつもたんすが乗っている。たんすの中の
しょぼい引き出しの中に、いつも暗闇が入ってる。

鋪装されてない道路を走ることが多いので、
トラックがガタガタ揺れると、たんすもガタガタ揺れて
暗闇もガタガタ揺れる。

ガタガタ揺れていくうちに、振動で、暗闇が
引き出しのわずかな隙き間から、ポコポコと洩れている

ガタガタの道を走っている時、ふと上を見ると、
うさぎの糞のような小さい煙が、黒く浮かんで
青い空に吸収されていくのを、僕は何度も見ている。

僕が運び屋を始めてから、もう10年になる。
僕は毎日、青空を確認している。
こころなしか最近は、昼でも
青に灰色が混じっているような気がする。

僕はもう、運び屋を廃業することはできない。
このタンスが捨てられたら、おそらく解体される。
バラバラになった引き出しから、無限の黒がたちあらわれて
たちまち世界中を夜にする。

そしてその夜は、おそらく二度と元に戻らない。


最近、なじみの得意先が廃業したり、
2代目になって、佐川急便に鞍替えしたりしている。
軽油の値段は1リットル200円になった。

僕はいつまで走れるだろう。とりあえずは今日も
トラックにはたんすが
マフラーと積載物から黒い煙が


自由詩 運び屋になったら  Copyright パラソル 2008-08-09 20:02:32
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