先生、質問があります。
笹子ゆら
なぜ、と
疑問を投げかけていたらきりが無いのですが
それでも脳内に渦巻いているそれらを
抑えておくのもどうも滑稽のような気がして
連絡帳を出すときにそおっと、
母の書いた言葉の後に慣れないボールペンで質問を
幾つか書き足したのを覚えています。
答えはあったのでしょうか。
きっと、親切だったあの先生は丁寧に
わたしの一番よろこぶような答えをくれていたのだろうに
今となってはもう、思い出すこともできません。
こうしてあの時から少し経って
わたしも歳を何個か重ねて
絶えることのない疑問はそのまま
心の中でしずかに萎んでいってしまった、
ようにおもうのです。
無理矢理にでも答えを作りだしてゆくこの時代に
わたしはそぐわないのかもしれません。
ひたすらにただ、欲しいだけであるのに
それすらも許してくれないようなので
口をつぐんでしまいそうになってしまうのです、否。
「先生、質問があります」