東京
nm6
東京の街に出てきましたという君がうらやましかった
*
そこにある建物が
中学2年生のころの記憶となくなってしまう
電車通学の
黒光る学生服が世界との接点だったころのぼくらに
溶けてなくなってぐるぐるまわる山手線の内側を
渋谷とか秋葉原とかギリギリそのものの学校で
ギリギリ笑っているのがあたりまえだった
ガムの匂い百人町、それから君の
ぼくの東京はそこからはじまっている
不潔さを助長するだけの蒸し暑さで
妄想のようにふるさと、というぼくの
グーグルマップの中に張り付いたすべての景色に
ぼくらが時間だけを写真に撮るようになるとき
歩くのはどこだろう、京都ではない
ノスタルジーがフランチャイズ展開するので
散在するばかりのぼくの記憶は
洗濯に失敗して色移りしたような風景が
想像力はセピアなんかじゃない
想像力は足りない
ニューヨークでもない
渋谷とか秋葉原とかギリギリそのものの学校で
ギリギリ笑っているのがあたりまえだった
産まれに行っただけの母方の実家で
黒光る学生服が世界との接点だった
だいたいの毎日は往復だった
東京だ、と
中学2年生のときにはじまったのだったと思った