東京
nm6

東京の街に出てきましたという君がうらやましかった



そこにある建物が
中学2年生のころの記憶となくなってしまう
電車通学の
黒光る学生服が世界との接点だったころのぼくらに
溶けてなくなってぐるぐるまわる山手線の内側を
渋谷とか秋葉原とかギリギリそのものの学校で
ギリギリ笑っているのがあたりまえだった
ガムの匂い百人町、それから君の
ぼくの東京はそこからはじまっている
不潔さを助長するだけの蒸し暑さで
妄想のようにふるさと、というぼくの
グーグルマップの中に張り付いたすべての景色に
ぼくらが時間だけを写真に撮るようになるとき
歩くのはどこだろう、京都ではない
ノスタルジーがフランチャイズ展開するので
散在するばかりのぼくの記憶は
洗濯に失敗して色移りしたような風景が
想像力はセピアなんかじゃない
想像力は足りない
ニューヨークでもない
渋谷とか秋葉原とかギリギリそのものの学校で
ギリギリ笑っているのがあたりまえだった
産まれに行っただけの母方の実家で
黒光る学生服が世界との接点だった
だいたいの毎日は往復だった
東京だ、と
中学2年生のときにはじまったのだったと思った


自由詩 東京 Copyright nm6 2008-08-05 22:24:30
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