文語短歌の真髄か
間村長
孤蓬さんに指摘されてから何気無く現代短歌2008年4月号を読んで居たら、彼女の言わんとする事にフィットする例歌に出会えた様な気がしました。(彼女は私の短歌の文語口語の不統一を指摘して居ったのですが。)
件の歌誌の秀歌鑑賞コーナーに三枝選の前川佐美雄短歌です
先つ日に死ぬべかりしが生ありてまた襤褸を着て梅花(うめ)をみており
あな低く卑しくなりし顔よなとあたりを見ればわれさへありて
みづからに猿轡はめて試せるも無為の日の夜のすさびなりけむ
二十年(はたとせ)のむかしはゲエリイ・クウパアのタイの縞柄も愛でて結びき
笠置シズ子があばれ歌ふを聴きゐれば笠置シズ子も命賭けゐる
切り炭の切りぐちきよく美しく火となりし時に恍惚とせり
前川は前衛歌人と言う事らしいですがこんなにきびきびとした文語的短歌で統一されていようとは思いませんでした。彼の「植物祭」は有名で寺山修二にも影響を与えたと思われますが塚本邦雄は言うに及ばず実にたくさんの歌人に影響を与えた前川の魅力の一端を知れただけでも収穫でした。孤蓬さんきかっけをありがとう。