からだのおと
nonya


<髪>

額にかかる倦怠を

耳元でうねる躊躇を

きっぱりかきあげて君は

さらさらと綺麗に笑った


<目>

ホントを見過ごしてしまったり

ウソを見破れなかったり

粗忽な精密レンズは

たびたび僕を楽しませてくれる


<口>

生き長らえるために食み

生き抜くために吸い

生き残るために発し

生きさらばえるために吐く


<手>

仄かな熱を握り締めて

柔らかな起伏を読み取って

千切れそうな糸を振り払って

溢れ出す昨日を塞き止めようとして


<胸>

ときどき空洞かと思われるその部屋は

セルロイドの皮膚と肋骨の下にある

ときどき心配になって手を当てれば

旧式のヂーゼル発動機の音がする


<背>

温かい知らせは胸で感じ取る

冷たい知らせは背中で感じ取る

僕が少し猫背なのは

背中のセンサーが発達しすぎたせいだ


<足>

どうしても君をうまく乗りこなせない

修羅場の真ん中でまたしてもノッキング

衝動のレギュラーガソリンじゃ

夢の麓にも辿り着けないってことだね


自由詩 からだのおと Copyright nonya 2008-08-05 19:38:13
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