からだのおと
nonya
<髪>
額にかかる倦怠を
耳元でうねる躊躇を
きっぱりかきあげて君は
さらさらと綺麗に笑った
<目>
ホントを見過ごしてしまったり
ウソを見破れなかったり
粗忽な精密レンズは
たびたび僕を楽しませてくれる
<口>
生き長らえるために食み
生き抜くために吸い
生き残るために発し
生きさらばえるために吐く
<手>
仄かな熱を握り締めて
柔らかな起伏を読み取って
千切れそうな糸を振り払って
溢れ出す昨日を塞き止めようとして
<胸>
ときどき空洞かと思われるその部屋は
セルロイドの皮膚と肋骨の下にある
ときどき心配になって手を当てれば
旧式のヂーゼル発動機の音がする
<背>
温かい知らせは胸で感じ取る
冷たい知らせは背中で感じ取る
僕が少し猫背なのは
背中のセンサーが発達しすぎたせいだ
<足>
どうしても君をうまく乗りこなせない
修羅場の真ん中でまたしてもノッキング
衝動のレギュラーガソリンじゃ
夢の麓にも辿り着けないってことだね