家庭内序列
N.K.

家の中では序列が決まっていて
お母さんが最初で次が君 そしてやっとお父さん
君が起きてくると休日でソファーに寝転がっている
父親の顔めがけて猫パンチをお見舞いするのが
挨拶代わり

「こらっ」と叫んで目を開けるのだが
そこには君は娘だと天真爛漫に主張している
「パパ」と顔いっぱいの笑みといっしょに呼びかける君がいる
視覚は皮膚感覚を乗り越えておそらく胸腺を刺激して
痛みと怒りといっしょにしつけさえも棚に上げてしまう

だめな父親は呼びかけられたので
「なぁーに」とか
「はいはぁーい」とか返すのだが
「パパ」に続いて君は「バァーカ」
「パパ バァーカ」

なんで?
どうして?
そんな言葉を使う人が馬鹿なんだよ
そう思う理由を200字程度でまとめて答えなさい
どう返しても君の力強い再断定の前に
父親はひざを屈せざるを得ない
「パパ バァーカ」

君が聞くときにはきまぐれで
指でさして
「何」と聞いているようなのだが
「はぁび」としか聞こえない
これは壁だよ
これはドアだよ
これは本だよ
これはうさこちゃんだよ
これはナイキのマークだよ

父親の義務を果たすように答えてみるのだが
君のお礼はいつも笑顔つきの猫パンチ
君の中では序列が決まっていて
ママ、君、そしてやっとパパ
君の猫パンチでつけられた鼻の頭の引っかき傷は
まだ治らない


自由詩 家庭内序列 Copyright N.K. 2008-08-05 15:20:16
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