UNDER GROUND
西日 茜

蒸す夜の リージェントホテルの地下
急な階段を降りると 黒い扉が開く
すっとした冷気と
スモーキーな空間に吸い込まれて
おもわずせてしまうほどの

カウンターでバーボンコークを注文して
テーブル席に運んでもらい
スパニッシュの彼と乾杯する
相方公認の友達
私たち、ここ、似合わないかもね
小さいイスからはみ出た巨漢の彼のおしりが
おかしくて笑った



牛肉をじっくり煮込んだチリソースには
ガーリックバターを塗ったパンが付いていた
それを少しずつ口に運びながら
辛いよって 舌をペロリと出して
バーボンをまた飲んで
テーブルランプがぼやけてくるころに
ライブが始まった

日本人のトリオ
往年のメタボリックな体型がいいな
ギターテクニックが炸裂し
一曲終わるごとに 額の汗をふく



店の奥まったところに
一人のニガーがいて
さっきはステーキを二皿たいらげていた
ニガーのブラウンのシャツの襟元には
南国の木の実がくるりと巻かれいて
ベースの男に向かって
曲が終わるごとにパナマハットを
丁寧にとって 胸の前に置き
首を横に傾け にっこりと敬意を表している

店の扉が開いて
元気よく女が入ってきた
年齢はよく分からないが
日焼けした肌に白いタンクトップ
ジーンズの腰からタトゥーが見えた
女はニガーの横で
しばらく音楽に酔いしれていたが
二人は寄り添って店を出て行った

一人の中年の婦人
キープしたボトルをバンドマンに振舞って
時折いっしょに飲んでいる
ヒッピーのようなインド綿で出来た
ドレスを着ていた
横顔が美しい人だと思った



二回目のステージのあと
私たちもバンドマンに挨拶をして
やっぱりアンコールのクラプトンが良かったなどと
感想を言って店を出て別れた

カウンターで騒いでいたサラリーマン風の二人
真っ赤な顔でこちらに手を振っていた


自由詩 UNDER GROUND Copyright 西日 茜 2008-08-04 12:40:03
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