夏の始まり
蜜柑

夏の始まりはいつも目が覚めると

私の視界はぼやけていて、ちょうど海の中で目を開けた時の様に、視界がゆらゆらと揺らめいている

足元は雲の上を歩くようにふわふわと足場が悪い

時折私は雲と雲との切れ間をジャンプして渡る

体が大きく揺れる

すると私の耳から脳みそと思想が零れでそうになったので、慌てて手で耳を押さえた

空と海が逆転している
青一色の世界

まるで夢の続きを見ているかのようだ

しばしば瞳の中で魚が泳ぎ飛び跳ねていたので

私はまだたきを何度もしなければならなかった

雲を渡り続けて、冷蔵庫の前に辿り着いた

白い扉を開けると、冷たい冷気と共に食欲という甘い匂いが漏れだしてきた

冷蔵庫の中にはぎゅうぎゅうに喜び、怒り、悲しみと一緒にお菓子が詰めてある
静かに瞳を閉じる

私はこの瞬間が一番好きだ
足が震え、雲の上から
真っ逆さまに落ちていく

最後には海に投げ出された体は激しく海面に打ち付けられて
ぶよぶよとした私の体は深く深く沈んでいく

ふと目を開けると
冷蔵庫から冷気と、雛鳥が餌を欲しがるようにピーピー鳴いていた

そして返事をする様に

ぎゅるりと私の腹の虫が鳴いた

今日も暑くなりそうだ




自由詩 夏の始まり Copyright 蜜柑 2008-08-04 09:30:18
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