夏の始まり
蜜柑
夏の始まりはいつも目が覚めると
私の視界はぼやけていて、ちょうど海の中で目を開けた時の様に、視界がゆらゆらと揺らめいている
足元は雲の上を歩くようにふわふわと足場が悪い
時折私は雲と雲との切れ間をジャンプして渡る
体が大きく揺れる
すると私の耳から脳みそと思想が零れでそうになったので、慌てて手で耳を押さえた
空と海が逆転している
青一色の世界
まるで夢の続きを見ているかのようだ
しばしば瞳の中で魚が泳ぎ飛び跳ねていたので
私はまだたきを何度もしなければならなかった
雲を渡り続けて、冷蔵庫の前に辿り着いた
白い扉を開けると、冷たい冷気と共に食欲という甘い匂いが漏れだしてきた
冷蔵庫の中にはぎゅうぎゅうに喜び、怒り、悲しみと一緒にお菓子が詰めてある
静かに瞳を閉じる
私はこの瞬間が一番好きだ
足が震え、雲の上から
真っ逆さまに落ちていく
最後には海に投げ出された体は激しく海面に打ち付けられて
ぶよぶよとした私の体は深く深く沈んでいく
ふと目を開けると
冷蔵庫から冷気と、雛鳥が餌を欲しがるようにピーピー鳴いていた
そして返事をする様に
ぎゅるりと私の腹の虫が鳴いた
今日も暑くなりそうだ