蒼光
くろね
白い風が高くから落ちてくるから
静かなる木々は光を持て余してざわめいた
浮かされた心はじわり汗ばんで
翳る度にいつかの幻を見る
この空の蒼さは罪を隠すかな
咲き誇る花の色はただ
一滴の夏を滲ませた
いつしか物語はほつれ始めて
描かれた者達は祈りを口にしてふためいた
降りしきる光がふわり舞い散って
忘れられないあの日の優しさを聞く
あの夢の続きを永遠に見ようかな
鳴り止まぬ蝉の声にまた
一滴の夏が落ちた
消え入りそうな甘い激情
微かに積もった淡い感傷
密やかに、汲んで、摘んで
どの月も等しく君を照らすかな
冷めやらぬ夜の草はただ
一滴の夏に濡れる