NO FRIENDS RADIO
青木龍一郎

エブリリトルシングのCDを買って、歌詞カードだけ抜き取ってあとのCDは捨てる。
捨てるというか、真ん中の穴のところに野良犬の鼻をつっこむ。
もし、鼻にエブリリトルシングのCDをつけたまま街道を走ってる犬が居たらそれは僕の被害者だ。
パニックを起こして、車とかで轢き殺したりしないようにしてもらいたい。

いやしかし、持田香織の書く歌詞は別に衝撃をもたらしてくれるような詩ではないし
詩としてはなんも優れたところは無いんだけど安らぐ。
平和な気分になるにはもってこいだ。


お隣の家に回覧板持って行ったら、その家がごおごお燃えていた時は爆笑した。
そんで構わず燃え盛る炎の中に突っ込んで回覧板置いてきた。
その場で消防隊に全裸にされてクレーンみたいなので空中に高く吊り上げられて
一斉に放水された。水圧が本当にヤバくて僕は子供が産めない体になった。

びしょぬれ状態で家にもどって、へこんでる僕が自然と手に取ったのは
エブリリトルシングの歌詞カードだった。
そしてそれを読んで元気になれた。
元気すぎて冷蔵庫の中のヨード卵を全て笑顔で握りつぶしてしまったくらいだ。
持田香織には感謝している。

「I'll get over you」という曲だった。

素敵な気分になれる文章だ。
すっかり悲しみは消えていた。
本当に持田香織には感謝している。

エブリリトルシングの歌詞を読めば持田香織の持った不思議な文章の才能を感じることだろう。




「I'll get over youの歌詞の一部」


この心の痛みが消えたとき
今より確かなこと!
強くなれる 少しずつ
大人になるね

















作詞:五十嵐充












持田じゃ…ないだと…!?





とりあえず、エブリリトルシングのシングル34作分の歌詞カードは全て我が家の神棚にしまってある。
だが忘れてはいけない。
同時に、この町のどこかにはエブリリトルシングのCDを鼻につけた野良犬がちょうど34匹
うろついているという事実を。

あるものはCDが邪魔で眼の前がよく見えず、息を引き取った不幸な犬も居るだろう…。
僕はそんな犬達の無念を胸にいだき、今日もエブリリトルシングの歌詞カードを見続ける。






しかし、本日の午後3時。驚愕の事態が起こった。
家の前で幼稚園生と取っ組み合いの乱闘をしていたとき
北の方角から鼻に丸いCDをつけた全裸の男たちがものすごい勢いでこちらに走ってくるのだ。
鬼の様な形相をしており、手には警棒を持っている。
そして、鼻についているCDはエブリリトルシングだ。


これはどんな解釈をすれば良いのか迷う。
もはや、解釈するのも面倒だ。もう何も考えずに目の前の事態を受け入れた。
男たちは
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ここでアイドルテクノポップベスト3!

1位:perfume
2位:Aira Mitsuki
3位:MEG
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僕を取り囲み僕に容赦なく蹴りを浴びせてきた。
まず、その警棒使えよって話ですよ。

僕は「お腹の子供が!お腹の子供が!」と叫んだのだが、彼らは手を緩めることなく僕を殺しにかかった。
半殺し状態になったところに、迎えに来た幼稚園バスが来た。
僕と乱闘していた幼稚園生と、男達はそれに乗り込み爆笑しながら逃げていった。





僕は道端でくたばったまま、今の事態を分析することにした。


【何故、鼻にCDをつけた男達が僕を襲いに来たのか】
?僕の被害者の犬たちが人間に化けて復讐にやってきた。
?犬を見かねた動物愛護団体の奴らが犬に扮して僕を殺しにやってきた。
?精神病院から抜け出した大量の男達が犬の格好を気に入って真似して、僕を殺しにやってきた。
?単なる妄想
?夢
?希望
?終わるの事の無いストーリー
?この心の痛みが消えたとき今より確かなこと!強くなれる少しずつ大人になるね





【何故僕は友達が出来ないのか】
?引きこもりだから








僕に友達ができないからこの文章は今もこうして存在し続けている。
僕ら壊れたレイディオ。


ノーフレンズな僕ら、この世界の申し子。


散文(批評随筆小説等) NO FRIENDS RADIO Copyright 青木龍一郎 2008-08-03 20:52:15
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