いつの間に依存した恋
衿野果歩
奪われた 赤いかさぶた 剥がされた また血が出ても 見ないフリした
手術した昔の傷に 口づけて 重ねて赤い傷となりたい
白い肌 「触らないで」と割れた声 口づけて消す 蒼い唇
いつだって重なれるのは一瞬で 長い針と短い針みたいに
分かつのは無理だと知っていた夜は あなたの体液が傷に染みる
カーテンに差し込む朝日 揺れる青 あなたの部屋で 海を渡る日
好きですと 告げて二人は閉じ篭る 八月三十二日の午後に
過ぎ去ったものが色あせてゆくなら あなたの忘れる景色になりたい