いつの間に依存した恋
衿野果歩


奪われた 赤いかさぶた 剥がされた また血が出ても 見ないフリした

手術した昔の傷に 口づけて 重ねて赤い傷となりたい

白い肌 「触らないで」と割れた声 口づけて消す 蒼い唇


いつだって重なれるのは一瞬で 長い針と短い針みたいに


分かつのは無理だと知っていた夜は あなたの体液が傷に染みる

カーテンに差し込む朝日 揺れる青 あなたの部屋で 海を渡る日



好きですと 告げて二人は閉じ篭る 八月三十二日の午後に


過ぎ去ったものが色あせてゆくなら あなたの忘れる景色になりたい


短歌 いつの間に依存した恋 Copyright 衿野果歩 2008-08-03 19:18:45
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