ビヨンド
そらの とこ

最近妻がビヨンドになってきている

40過ぎだというのに
髪をピンピカリンの金髪にして
耳は穴だらけ
いくつもピアスをつけて
じゃらじゃらと音をたてている

夏だというのに
わざわざ日焼けサロンにも行く
妻よ

たった一日顔を見なかっただけで
ビヨンドどころかアダモちゃんになっていた

妻は食事を控えだし
僕のご飯も
低カロリーだの糖質オフだの
やめてくれよ
まあ僕の体にはちょうどいいってか


 いつだったかな
 妻が珍しくオシャレな雑誌を買ってきた
 タイトルは……なんとかコレクションだったかな
 その表紙にいたのがビヨンドだった
 妻はじーっと表紙を見つめる
 3分見つめて床に入った

 そのときふざけて
 ビヨンドは美人だな、お前はブヨンドか。ぷっ。
 ぶよぶよのブヨンドか。ぷっぷっぷっ。
 と言ったかもしれない。


日曜日
朝起きたら妻はいなかった
出かけてるのか
ふと枕元を見ると
テカテカしたノートが落ちていた

開いてみるとそれはプリクラ帳なるものだった

ビヨンドの妻が笑っている
たくさん笑っている
屈託無い笑顔
こんな笑顔見たことあったっけ

妻と娘とその友達
とても楽しそうだ

ほほろ ほろほろ
情けないけど泣けてきた
悔しいなあ
ひとしきり泣いていたら
もう午後3時

そうだ

僕はエコバッグ片手に商店街
今日はおいしいハンバーグ作ってやるぞ

だから笑顔で帰っておいでビヨンド

僕が一番愛してるさビヨンド

恥ずかしいけどさ

今夜よろしくな


自由詩 ビヨンド Copyright そらの とこ 2008-08-03 00:38:06
notebook Home