快適
nonya
ガラス張りの冷蔵庫から
ぼんやり眺める街並みは
いつか見た夢のように
とても希薄で
行き過ぎる人影は
照りつける陽射しに
丁寧に舐め回された揚句
溶けかけている
薄いアイスコーヒーと
引き換えに買ってしまった
心地良い亜寒帯の風
汗は速やかに
エクリン腺の洞窟深く
ひいていくのだけれど
快適な環境は
僕達の賞味期限を
延ばしてくれるのだろうか
乾燥した会話は
僕達の汗と涙を
浄化してくれるのだろうか
清潔なBGMは
僕達の苛立ちを
少しは丸めてくれるのだろうか
いつから僕達は
味も匂いもしない
清浄野菜になったのだろうか
エアコンの風に伝票がそよぐ
干からびた疑問を
テーブルの上に並べたまま
僕はまだ
席を立てないでいる