水族館へ
山内緋呂子

 じゃがいも伯爵(19)、サイコ(23)と、水族館へクラゲを観に行く。キートン先生(43)も誘ったが美輪明宏の音楽会へ行くので欠席。
 電車でトコトコ行く。道中、伯爵が、自分のことを「俺」と言うので、男の人はいくつになっても自分のことを「僕」と言うと七難隠しますよ、と言うが反応なし。靴ひもが水色だったことに感心。サイコは「たけのこの里」をごりごり食べ「きのこの山は嫌い。サクサクしてて、ビスクルだから。」ビスクル?ルはいらないよ。でもそれ、いいね。
 駅に着いてから10分ほど歩く。サイコが「おひるはカレーがいい。」と言う。今喰ってたろ。クラゲね、クラゲ観てからね。入場料払って、すぐクラゲ室へ。うつくしい。ちぢんだりふくらんだり。どっちが上で下だかわからない。少し、天本英世とポムポムプリンの帽子に似ている。それから、私たちは、例えばイルカ、ラッコ、サメなど観ればいいのに、イワシ、タコ、ホヤ、など観る。寿司屋感覚。
 サイコに連られて食堂へ。伯爵はチャーハン。サイコは焼きそばとチャーハン(喰いすぎ)私は焼きそば。(メニューが二つしかない)伯爵は、「カマボコがうまい」と爺みたいなことを言う。
 サイコが、妹のエミリーにお土産を買いたい、と言うので売店へ。伯爵は、「僕には、お土産を買って帰りたいような人がいない。」と悲しいので、「じゃあ、私に買って」とイヤな大人みたいなことを言ってみた。快諾。私はクラゲのキーホルダー探し。全部プラスチックで、白か青、目がクリクリしてる。もっとこう、ビニールで、角度によって光ったりしないかなあ、と探すがない。仕方ないので、電車で食べるバナナチップを買った。サイコは、手足が動くガイコツを買っていた。
 駅で解散。伯爵が、うれしいんだか困ってんだかわからない顔で、お土産をくれた。歩きながら、待ちきれないので開いてみた。オレンジのトビウオだった。


散文(批評随筆小説等) 水族館へ Copyright 山内緋呂子 2003-09-11 18:39:07
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