愛されていた
北斗七星





ネクタイを締めることを望まれ
そんな暮らしなど思いもつかぬほど
離れたところにいた僕は
好奇心はあったが背筋が伸びる感覚より
繋がれた犬のように感じてしまう
自分自身の視線が中途半端に溜め息が漏れた


渡された新型の携帯は
目新しい形と機能が嬉しかったが
僕自身の機能性の悪さを
埋めてくれるものでもなかった


新しいことへの挑戦は
描いたものと予想していたものが
交互に波のように押し寄せ
僕は漂っていた


誰かの期待が嬉しかった
誰かの期待が悲しかった

自分自身の聞こえない声が聞こえる
自分自身の見えなくなっていた両手が見える

この目に見える自分を見つめ
この手に触れる自分を感じ


この目に見えない自分を信じ
この手に触れない自分を信じ

ひとりではない自分自身を
冴えない頭で愛してみたい






冴えない頭で冴えない僕は
見えない自分自身に愛されている

僕は愛されていた




僕は愛されていたんだ






自由詩 愛されていた Copyright 北斗七星 2008-07-31 09:34:08
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