もういない君とか私みたいな
さだあいか (サダアイカ (aika))

ゆっくりと日が沈む
みたいに
さよならを言う
もういない君とか私みたいな
消えていった
あなた
過去というものですか

陳腐だ
陳腐だ
陳腐だ

言わなくてもいいことを言い続けて
ラップのように
とまらない物語のように
楽譜の音符が散らばった
飛び回る音楽の妖精だ
よくみろ
あれは魚だ
養殖された魚だ
餌をあげるときの飛沫

わあ生きている
声のない声をあげてあげて
飛び上がって入り乱れて
ぬれて水にまみれて
つややかに光っている
どろりとした内臓
閉じ込めてジャンプ
ジャンプして生きて生きて食って
食ってジャンプジャンプ
ジャンプだもっともっと
もっと
ロマンチック
何匹ものロマンチック
ロマンチックがぷちぷちと
わいて出るので
出来る限りのロマンチックを
ぷちぷちと潰したい
強靭なロマンチック
セルライトの如く
ぷちぷちとぷちぷちと
ジャンプするそばから
ひとつ残らず
飛び上がった水のひとつぶひとつぶが
泡のひとつひとつが
波紋のひと輪ひと輪が
生き物なのです
ロマンチックなんて死ねばいいのに
死ねばいいのに
死ねばいいだなんて
死ねばいいだなんて
やっぱりセルライトの如く
老廃物の
ああ憎しみよ憎しみだ
平に平に平に

ジャンプ

捕らえようのない光みたいな
ロマンチックを捕まえて平らに伸ばして
同じ大きさに切って
整理して額にかけたりは
しない
写真ではないので
生きていないので
鱗のようだ
ぱらぱらと舞う
みえない
みえない
みえない目を見開いていたら
遠くで手を振っている君
君がいた
いたみたい
手をふっていたみたい
みたい
みてみたい
ふってみたい
ああなんだ
あれは私か

ゆっくりと
ゆっくりと
ひかりの粒は散らばって
魚の餌みたいな素敵だったものたちと
太陽はすっかり夜に溶けさって
小さな点が
星になればいいのに
やけに痛いな

刺さって
いいえ
そんなに綺麗なものじゃない
潰したはずのロマンチック
鱗のように生臭い
生きている
あれはただのゴミだ
ただゴミが目の中に入っただけ



自由詩 もういない君とか私みたいな Copyright さだあいか (サダアイカ (aika)) 2008-07-31 03:08:11
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