傷
高杉芹香
もう誰も好きにならない
なんて
こんなキモチになるたびに思う。
どうして愛する人のそばで生きていけないんだろう。
どうして愛する人に同じ温度を求めて疲れちゃうんだろう。
あたしの愛する人はとても遠い人。
誰もに愛される人。
彼に出会えてなかったら
この数年のトキメキはなかった。
ばかみたいに
連絡を待って。
連絡が来るだけで心潤んで
何時間でも笑っていられた。
連絡が途絶えたら何度も何度も深呼吸をして時間を過し。
空を見上げては
同じ景色を見ようと。
たまに泣いた。
大好きで。
大好きで。
凄く好きだった。
好きになるだけ
近く感じたし。
好きになるだけ
遠くなった。
好きになるだけ
叶わないこと
敵わないこと
多い気がした。
最近
積乱雲が急激に膨らんで
突然の落雷を落としている。
先週。
突然にあたしに降りかかった
劣等感とか
嫌悪感とか
そんないらない感情も
まるで突然の落雷のようで。
何日も自分を苦しめている。
簡単なことなのに。
確認すれば
答えはわかることなのに。
その答えに傷つくのが怖くて
確認することも出来ない。
だから。
確認もせず。
大好きな人から離れようとしている。
私は
また
離れようとしている。
来る者拒まず。
去る者追わず。
そんな世界で生きてる彼は きっと
僅かに喪失感を感じただけで
数日後には
私の存在を
忘れていくんだろう。
そうして
出会ったことが
また
過去になる。
愛したことが
また
過去になる。
こんなことを書きながら
今
ここに
あの人を愛するキモチが胸から溢れ出して。
体の痛みに鈍感になる。
体中の傷より
心の傷の方がどうしてこんなに痛いんだ。
これが愛を忘れられないということ。
これが彼を愛しているということ。
これが
向き合うことから逃げるということ。
彼から逃げるということ。
彼を愛しているということ。